物価高騰のなか、なぜすぐ動けないのか
2026/05/12
「やれることはやっている。でも、追いつかない」
ガソリン代、電気代、原材料費、人件費。値上がりの波は、止まる気配がありません。
経営者の方々とお話ししていると、こうしたお声をよく耳にします。
物価高騰のなかで、ご自身の会社はいま、利益面でどう動いているのか。数字として、きちんと把握できておられるでしょうか。
少し意地悪な問いに聞こえたら申し訳ありません。ただ、ここがいま、中小企業の経営にとって、本当に大事な分かれ目になっているように私は感じています。
月次PLを、いっしょに見てみる
ご自身の会社の月次のPL(損益計算書)を、お手元に出してみてください。
そして、こんな問いをご自身に投げてみていただきたいのです。
粗利は、毎月どのように推移していますか。 粗利率は、いつから悪化し始めていますか。
この問いに、答えに詰まってしまう中小企業が、決して少なくないように思います。
「いや、うちは月によって粗利がめちゃくちゃで、推移なんて読み取れる状態じゃないんですよ」
正直に申し上げると、そうお答えになる経営者の方が、かなり多いというのが私の実感です。
なぜ、粗利が「めちゃくちゃ」になるのか
理由は、たいてい一つに行き着きます。
売上の計上タイミングと、それに紐づく原価の計上タイミングが、月でずれているからです。
3月に売り上げた商品の仕入が、2月や4月に計上されている。当月の売上に対応する外注費が、別の月にまとめて落ちている。こうしたズレが積み重なって、毎月の粗利と粗利率は乱高下します。
ここで、一つ立ち止まってみたいのです。
粗利は、自社の製品やサービスそのものが、お客様にとってどれだけの価値を生み出しているかを表す数字です。経営の根っこにある指標、と言ってもいいかもしれません。
それほど大事な数字が、毎月の経営実態を表していない。なかなかゆゆしき話だと、思いませんか。
月次会計が「税務の道具」になっている
なぜ、こんなことが起きるのか。
正直に言うと、これは中小企業の月次会計が、長らく「税務申告のための作業」として運用されてきたことの功罪だと、私は考えています。
会計は外部の事務所に丸投げ。日々の処理はラクな現金主義で済ませ、税務申告のときだけ、決算で発生主義にまとめて修正する。
毎月の数字は、税務上の帳尻が合っていればよし。経営判断のためにタイムリーに使う、という発想で組まれていないのですね。
たとえるなら、車のダッシュボードがリアルタイムには動かず、月末や年度末にだけ、バックミラー越しに「先月はだいたいこんな速度でしたよ」と振り返って教えてもらっている、ような状態かもしれません。
これでは、いまのように物価が動き、コスト構造が変わる局面で、自社のどこが詰まっているのかが、すぐには見えません。
見えてこなければ、動けません。
預金通帳が薄くなってから、動き出す構造
結果として、何が起きるか。
預金口座の残高がじわじわと目減りしていって、「これはまずい」と気づいたところで、ようやく対策を考え始める。
そのタイミングで銀行に資金調達のご相談に行っても、営業利益の薄い会社に対しては、金融機関も積極的な姿勢は取りにくいものです。条件が厳しくなる、金額が削られる、時間がかかる。
打ち手を打ちたいのに、打てない。打ちたい時期には、もう間に合わない。
これは、本当にもったいない構造です。
根本要因は、どこにあるのか
では、この状況の根本要因は、どこにあるのでしょうか。
私はこう考えています。月次会計が、経営者ご自身が今月の自社を語るための「経営の道具」になっていないこと。ここに尽きるのではないか、と。
逆に言えば、月次の数字を、税務のためではなく、経営判断のために整える。それだけで、見える景色は大きく変わります。
粗利の推移が読める。粗利率の悪化タイミングが特定できる。物価上昇の影響が、どの商品・どの取引で発生しているかが見える。そこまで見えてはじめて、値上げ交渉、商品ミックスの見直し、コスト構造の再設計、といった具体的な打ち手が、地に足のついた形で議論できるようになるのですね。
BanSolでも「定期モニタリング」というメニューで、こうした月次のリズムをご一緒に組み立てるお手伝いをしていますが、誰と組むかはそれぞれです。社内の経理体制を見直す、顧問の税理士事務所に月次面談を依頼する、形はいろいろあっていい。
大事なのは、月次会計を「税務の道具」から「経営の道具」へと、立ち位置を変えること。
先日私もクライアントの経営者の方と「この3ヶ月で粗利が2~3%悪化してますね。」「やっぱりそうですか、〇〇が高くなってるし来月からさらに〇%値上げという連絡がきています。」「それは大変ですね。原価率改善のあの話、そろそろ具体的に取り組みましょうか。」という風にタイムリーな経営判断のキャッチボールや次の打ち手の話が目まぐるしく議論されるようになっています。
物価が動く時代だからこそ、ご自身の会社の数字を、ご自身の言葉で語れる状態を持っていただきたい。心からそう思っています。
この度はブログを読んで頂きありがとうございました。
経営に"財務の目線"を
中小企業のチェンジメーカー 谷口純一
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